パニック映画やアウトブレイク物だと誤解、というか期待して見てしまう人がいるかと思いますが、本作はそういう映画ではないので注意してください。
前作「ナイロビの蜂」にも通じる、人の愚かさが描かれた映画です。
見る人によっては、また別の見方となるかもしれません。
色んな見方が可能な映画だったと思います。
人は見えているつもりで何も見えて無く、
見えなくなるとその愚かさを露呈し、
見えてしまうと逆に多くのことに縛られる上、
見えるからと言って万能でも無い。
そんな事を描かれてしまうと、自分がこの映画を見て「知った気になる」のが怖く思えます。
前作「ナイロビの蜂」では「知る努力をしなかった愚かさ」が描かれていたと思います。その前作で観客は傍観者でしかありませんでした。しかし、本作ではただの傍観者ではなく、登場人物と同次元で見る事になると思います。それ故、見ている最中はものすごいストレスを感じる映画でもあれば、相当疲れる映画でもあります。
被害者体験が擬似的に体感できました。
登場人物は全て名前がありませんでした。
それはキャラクターをあえて設定しない事で、より「起きている事実」を観客に体感させようという意図があったのかもしれません。普通映画は人物を描く事が基本ですが、人物よりも事件だけを描く事で、特定の人物に感情移入するのではなく、この事件を観客に体験させたかったのでしょうか。
何にせよ、非常に効果的だったと思います。
また、見える者、見えない者の対比というか二元論的手法は、最近で言えばバベルにも通じる所がありました。バベルが「関係」であれば、こちらは「知」だと思います。
映画として本当におもしろいのか?
決して万人受けではないと思います。
ただ、とんでも無い映画だったと思います。
個人的には素晴らしい作品でした。
評価:★★★★★
上映中の映画館 >>> http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tyst/id330417/
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